両家の絆を深める結納の手引き
結納は、「これから家族になる」両家が気持ちをそろえるための節目の儀式です。
近年は仲人を立てず、両家の親と新郎新婦だけで行う形も増えています。
この記事では、結納までの段取り、当日の流れ、費用の考え方を、初めてでも迷いにくい手順に整えて解説します。
大切なのは形式の正解探しではなく、両家が納得して気持ちよく当日を迎えることです。
この記事で分かること
- 結納の形式と場所の決め方
- 顔合わせで確認しておく項目
- 結納当日の流れと前日までの準備
- 費用項目の整理と話し合いの進め方
結婚への第一歩:ご両親との正式なご挨拶

結納や顔合わせを気持ちよく進めるためには、最初の「ご挨拶」が土台になります。
ここでは、日程の決め方から当日の振る舞い、伝える言葉までを、実務ベースで確認していきましょう。
両親への挨拶は「形式よりも誠意」。二人で将来像をそろえたうえで、落ち着いて伝えることがいちばん大切です。
訪問日程の決め方と事前準備
まずはそれぞれの親に「結婚前提でお付き合いしている」ことが伝わっているかを確認し、訪問の相談に入ります。
一般的には、新婦側の実家(またはご両親)へ先に挨拶し、その後に新郎側へ、という順番が多い傾向があります。
- 日程は相手側の都合を優先し、候補を2〜3案ほど用意する
- 訪問時間は日中が基本。食事をはさむ場合は事前に相談しておく
- 交通事情や天候も考え、遅刻しない余裕のある移動計画にする
服装と手土産の基本
清潔感があり、相手のご両親に「きちんと向き合っている」印象が伝わる服装が無難です。
迷う場合は、フォーマル寄りの装いを選ぶほうが安心です。
- 男性:ダーク系スーツが基本。派手なネクタイや香水は控えめに
- 女性:スーツ、または落ち着いたワンピース。露出が多い服は避ける
- 手土産:高価すぎず、地元の名産や季節のお菓子などが選びやすい
のしは必須ではありませんが、用意するなら紅白の結び切りが一般的です。包装の形や名前書きは、お店に相談すると間違いが減ります。
当日話す内容と伝え方
挨拶の場では、まずは自己紹介とお礼を丁寧に伝えます。
そのうえで「結婚を前提に考えている」「二人で生活の計画を立てている」ことを、背伸びしすぎない言葉で説明するのがコツです。
挨拶で使いやすい言い回し例
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
私たちは結婚を前提にお付き合いしており、今後について真剣に話し合ってまいりました。
至らない点もあると思いますが、力を合わせて温かい家庭を築いていきたいと考えております。
どうかお許しとご指導をいただけますと幸いです。
収入や住まい、仕事の方針などは、聞かれたら答えられるように最低限の整理をしておくと安心です。
ただし「完璧な計画」を見せる必要はなく、まずは誠実に話し合う姿勢を示しましょう。
結婚へ向けての両家の顔合わせ
両家の顔合わせは、結納を行う場合でも行わない場合でも、関係づくりの中心になる機会です。
当日の進行がスムーズになるよう、事前に「場所・時間・流れ・話す内容」を軽くすり合わせておくと、場が和みやすくなります。
初対面では、手土産を持参し、相手のペースに合わせて会話を進めることが基本マナーです。
場所と日程の決め方
場所はホテルやレストランの個室、料亭、またはどちらかの自宅などが候補になります。
「静かに話せる」「移動が少ない」「食事がしやすい」の3点で選ぶと失敗しにくいです。
- 日程調整は新郎側から提案するケースが多いが、両家の事情を最優先にする
- 食事をする場合は、アレルギーや苦手食材を事前に確認する
- 写真撮影の希望があれば、店員さんに撮影可否を確認しておく
当日の基本的な流れ
進行は「挨拶→自己紹介→食事→今後の相談→締め」の流れが一般的です。
きっちり台本を作るよりも、迷いがちなポイントだけ先に決めておくと安心です。
- 開始:新郎新婦が両家へお礼を伝える
- 自己紹介:男性側→女性側の順に、簡単な紹介と近況
- 相談:結納の有無、結婚式の予定、住まい・仕事の方向性など
- 締め:次の予定(結納日や段取り)を確認して終了
顔合わせで話しておくと良いテーマ
会話は「家族紹介」「結婚後の生活」「結婚式の希望」の3本柱を意識すると、偏りにくくなります。
結納を検討している場合は、この場で「形式・時期・費用負担」を軽く触れておくと、後の調整が楽になります。
- 住まい:いつ頃から一緒に住むか、場所の候補
- 仕事:転勤の可能性、今後の働き方の希望
- 結婚式:時期のイメージ、規模感、親族中心か友人中心か
- 結納:する・しない、するなら略式か正式か、だいたいの時期
初顔合わせ成功のためのポイント

顔合わせは「失礼がないこと」も大切ですが、それ以上に「お互いに気持ちよく帰れること」が大切です。
ここでは、事前準備と当日の立ち回りを、チェックしやすい形で整理します。
なお、地域や家庭の慣習で希望が分かれるポイントもあるため、決め打ちせずに「両家の希望を聞きながら整える」姿勢が安心につながります。
事前に共有しておくチェックリスト
事前に決めておくと当日がラクになる項目を、表にまとめました。
すべて完璧に決める必要はありませんが、最低限ここだけ押さえると安心、というラインです。
| 確認項目 | 事前に決めること | 当日のひと言例 |
|---|---|---|
| 場所・時間 | 個室の有無、開始時刻、所要時間の目安 | 本日はお時間をいただきありがとうございます |
| 食事 | 和洋の希望、アレルギー、乾杯の有無 | 皆さまで楽しく過ごせたらうれしいです |
| 手土産 | 持参するか、持つ場合の価格帯の目安 | ささやかですが、お口に合えば幸いです |
| のし・表書き | 必要かどうか、用意するなら紅白の結び切りが基本 | 地域の作法に合わせたいのでご相談させてください |
| 話すテーマ | 結納の有無、結婚式の時期、住まい・仕事の希望 | まだ未定もありますが、方向性を共有できればと思います |
当日の進行を支える小さなコツ
会話が途切れるのが心配な場合は「紹介の順番」「話題の種」を二人で用意しておくと安心です。
場を仕切る役は新郎新婦が担い、両親に無理をさせないことも大切な配慮です。
- 自己紹介は長くなりすぎず、仕事・趣味・近況を短くまとめる
- 写真は食事が始まる前か、落ち着いたタイミングに声をかける
- 結婚式の話は希望の押し付けにならないよう「候補」として共有する
結納の日までの準備

結納を行うと決めたら、次は「形式」「場所」「結納品」「当日の服装」などを順番に固めていきます。
ここで焦って買い物を始めると、地域差や両家の考え方の違いで手戻りが起きやすいので、まずは相談の順番を整えましょう。
結納準備は「何を買うか」より先に「どの形式で、誰が何を用意するか」を決めるとスムーズです。
形式と場所を決める
結納は、女性の自宅で行うのが本来の形とされていますが、近年はホテルや式場、料亭の個室で行うケースも多くあります。
予約時は「結納(または両家の会食)」であることを伝え、個室や進行サポートの有無を確認しましょう。
- 正式結納:結納品をそろえ、儀式として進行する
- 略式結納:結納品を簡略化し、会食中心で行う
- 顔合わせのみ:結納は行わず、会食と今後の相談を中心にする
結納飾りと結納品の考え方
結納飾りは、地域によって様式が分かれます。関東風・関西風の違いだけでなく、地方独自のしきたりがある場合もあります。
迷ったときは、両家で「どこまで伝統に寄せるか」を先に決めると、選びやすくなります。
婚約指輪と結納返しの段取り
結納のタイミングで婚約指輪を贈るケースもありますが、必ずしも同日にそろえる必要はありません。
結納返しも、品物で返すか、現金や記念品にするかなど選択肢があるため、両家の意向を確認して進めましょう。
- 指輪:サイズ調整や納期があるため、予定がある場合は早めに確認
- 結納返し:記念品にするか、現金にするか、または簡略化するか
- 書面:目録を用意する場合は、書式や表書きを事前に相談
結納当日の準備と進行

結納当日は、結納品の扱い、手土産、謝礼の渡し方など、細かい作法が重なります。
ただし、すべてを暗記する必要はありません。前日までに「持ち物」「流れ」「誰が何を渡すか」を紙にまとめておくだけで、当日の不安がぐっと減ります。
服装は両家で相談し、格をそろえることが安心です。迷う場合は「ややかしこまった側」に合わせると失敗しにくいです。
前日までに用意するもの
当日の忘れ物を防ぐために、代表的な持ち物をチェックリストにしました。
- 結納品・目録・飾り方のメモ
- 手土産(必要な場合)
- 仲人がいる場合:謝礼・お車代・酒肴料など(両家で負担を確認)
- 写真撮影の段取り:撮影者、タイミング、撮影可否の確認
当日の流れの一例
進行は形式や会場によって変わりますが、基本は「挨拶→結納品の受け渡し→言葉のやり取り→会食」という流れです。
ホテルや式場の結納パックを利用する場合は、進行をサポートしてくれることもあるため、予約時に確認しておくと安心です。
- 両家の挨拶、自己紹介
- 結納品の確認・受け渡し、目録の読み上げ(形式により省略あり)
- 婚約記念品や結納返しの受け渡し(行う場合)
- 会食、記念撮影、今後の予定確認
仲人がいる場合の謝礼の考え方
仲人への謝礼やお車代、酒肴料などは、まず「結納における役割」と「会食をするかどうか」で扱いが変わることがあります。
金額や渡し方は地域差もあるため、会場の担当者や両家の経験者に相談しながら、無理のない形に整えるのが現実的です。
結納のあとに進める準備:荷送りと結婚式までの流れ
結納が終わったら、結婚式の準備や新生活に向けた段取りが本格化します。
ここでは「何から手を付ければいいか」が見えるように、一般的な流れを時期別にまとめます。
進め方は家庭の方針や居住形態によって異なりますが、両家に関わる項目は「決まったら早めに共有」しておくと、後からの行き違いが減ります。
時期別に見る準備の目安
結婚式の数か月前から当日までの、よくある準備を表で整理しました。
| 時期の目安 | 主な準備 | ポイント |
|---|---|---|
| 結納後〜 | 挙式スタイルの検討、式場見学、概算見積もり | 希望を出しすぎる前に、両家の意向と予算感を確認する |
| 挙式3〜6か月前 | 会場決定、招待客のたたき台、衣装の検討 | 親族関係の招待は、両家の線引きを先にすり合わせる |
| 挙式2〜3か月前 | 招待状準備、引出物検討、進行打ち合わせ | 返送期限や肩書き表記など、ミスしやすい点は早めに確認 |
| 挙式2〜3週間前 | 荷送りの段取り、新居の準備、必要品の最終確認 |
結納に必要な各種費用の目安
結納にかかる費用は、会場の有無や形式、仲人を立てるかどうかで大きく変わります。
また同じ地域でも、家庭の考え方で「簡略化する」「記念品に重点を置く」などの違いが出るため、目安はあくまで参考として捉えましょう。
費用でいちばん大切なのは、金額の大小よりも「誰が何を負担するか」を両家で事前に合意することです。
費用項目の一覧と考え方
結納で発生しやすい費用を、項目ごとにまとめました。
具体的な金額は地域差があるため、まずは「項目の抜け」を防ぐ目的で確認してください。
| 費用項目 | 内容 | 目安の幅 |
|---|---|---|
| 会場費・会食費 | 自宅以外で行う場合の個室料や食事代 | 会場・人数で変動 |
| 結納金 | 結婚に向けた資金の意味合い。地域・家の方針で幅がある | 慣習により幅が大きい |
| 結納飾り・結納品 | 関東風・関西風など形式で変わる。簡略化も選べる | 3万円〜10万円程度が一つの目安 |
| 衣装代 | 振袖・略礼服など。レンタルか購入かで変動 | 選ぶ衣装で変動 |
| 酒肴料など | 会食を行わない場合の代替として用意するケースがある | 地域の慣習次第 |
| 仲人への謝礼・お車代 | 仲人を立てる場合に発生。役割範囲で調整 | 地域・役割で変動 |
見積もり時に確認しておくと安心なこと
「あとから追加になりがち」なポイントは、事前に聞けば大半が防げます。
次の項目を、両家の相談メモとして使ってください。
- 結納パックの中身:進行サポート、引出物、写真の扱いが含まれるか
- 会場の追加料金:個室料金、延長料金、飲み物料金のルール
- 結納飾りの扱い:持ち込み可否、持ち込み料の有無
- 服装の格:両家で「正装寄り」か「略礼装」かをそろえる
よくある疑問
会場費はどのように負担する?
折半にする家庭もあれば、女性側・男性側のどちらかが負担する場合もあります。最初に「結納の形式」とセットで話し合うと決めやすいです。
結納金の金額はどう決める?
相場だけで決めると行き違いが起きやすいため、地域の慣習と両家の考え方を確認し、無理のない範囲で合意するのが安心です。
結納飾りはどの程度そろえるべき?
フルセットにこだわらず、略式にする選択も増えています。大切なのは「両家が納得できる形」に整えることです。
まとめ
結納は、両家が気持ちよく「これからの関係」を確認できるように整える儀式です。
形式や費用は家庭によって異なるため、まずは二人が中心となって情報を整理し、両親と相談しながら決めていきましょう。
当日は準備したことを一つずつ実行できれば十分です。完璧を目指すより、「誠意」と「配慮」が伝わる段取りを優先すると、良い時間になりやすくなります。

